2018年1月18日(木) 18:00〜19:30、
講師に(株)INDETAIL代表取締役坪井大輔氏をお迎えして
「ブロックチェーン活用の今と未来」の演題でお話を伺いました。
場所はいつものユビキタス協創広場U-calaでした。
最初に坪井氏の自己紹介と会社(INDETAIL)の紹介がありました。会社名は「神は細部に宿る」の精神を表しているとの事です。坪井氏は2000年に北海道工業大学(現北海道科学大学)応用電子工学科(三橋ゼミ)を卒業され、IT系企業を経て2012年に小樽商科大学大学院アントレプレナーシップでMBAを取得されました。
同氏が代表取締を務める(株)INDETAILは2009年1月に設立し、ニアショア総合サービス事業として「ローカルベンチャーのローカルビジネスを構築する」との理念のもと、主に高度なWebサイトの構築、スマートフォンアプリ、さらに最近では仮想通貨ビットコインの基盤技術であるブロックチェーンの活用に先駆的に取り組んだ事業展開をしているとのことです。なお、社員数は152名で外国籍の社員が多いことに特徴があるとのことです。
現在はスマートファンが全盛ですが、ポストスマートフォンを世界中の企業が模索中であり、これは2019〜2024年頃に出現すると言われているとのことで、各社が競ってそれを実現するデバイスを開発しているとの紹介がありました。また、facebookやYahoo!の目的はデータの蓄積であり、現在データの取り扱いは下記のようになっているとのことです。
・ブロックチェーン: DATAの保管
・IoT: DATAの取得
・Cloud: DATAの蓄積
・AI: DATAの活用
次の世代のスマートソサイエティとして、中央管理者を必要としないブロックチェーンがキーテクノロジーとなるとのことです。
講演内容は大きく分けて4つありました。
1) なぜいまブロックチェーンなのか
ブロックチェーンはP2Pの分散型台帳技術を活用しているため、中央管理者を必要としないにも関わらず極めて堅牢なシステムを実現していることに特徴があり、下記のような利点があるとのことです。
・時間の短縮
・コストの削減
・リスクの低減
・信頼の向上
2) ブロックチェーンの基本
ブロックチェーンの仕組みの説明があり、ビットコインの場合にはPoW(プルーフ・オブ・ワーク: 仕事の証明)がハッシュ関数や暗号技術をベースにしており、最初にマイニング(採掘=ハッシュ値の計算)に成功したと宣言があったときに、他のマイニングを行うマイナーが遡って7つのブロックを正しいとの合意が形成されると、新しいブロックとして追加されるとのことです。
ブロックチェーンにはパブリック型とプライベート型があり、ビットコインはパブリック型ブロックチェーンの典型的なものであるそうです。現在企業などがデータ管理のために研究・開発を行っているものはプライベート型です。プライベート型は管理者が参加者を選択可能するものであり、ビットコインのようにブロックチェーンをそのまま適用しているわけではないとのことです。ブロックチェーンの場合には悪意を持った参加者が多数いることを想定しているのに対して、プライベート型の場合には善意の参加者であることを基本としているとのことです。このことにより、下記の利点があることが紹介されました。
・プライベート型は管理者が参加者を選択可能
・ノード運用者への手数料が不要
・マイニングが不要
・取引速度が高速
3) 話題の「ICO」について
ICO(新規仮想通貨公開)が話題になっているが、日本ではまだ事例はないものの海外では詐欺と考えられるICOの事例が多々あり、国によっては禁止などの措置がとられているとのことです。これは従来からあるIPO(新規公開株)を仮想通貨(厳密には通貨とはいうことはできず、トークンまたはコインと表現する)によって行うもので、3日間で巨額の資金の調達に成功した事例等が紹介されました。また、トラブル事例の紹介もありました。トークンを発行した組織が自前で取引所を持つなどして、詐欺行為やマネーロンダリングに使用される懸念があるそうです。
また、ICOによる資金調達に成功するためには、大物のアナリストなどがそのコインを大量に購入したという情報などが必要であるそうです。
4) 様々なユースケース
ブロックチェーンの利点(時間短縮、コスト削減、リスク低減、信頼向上)を活用したユースケースの紹介がありました。ブロックチェーンはIT企業には必須の技術であり、様々な業界で勝つためのユースケースは多様化しているとのことです。例えば下記のような活用が考えられているそうです。
・資産管理
・契約管理
・保険
・本人確認
・自立分散型組織
・スマートグリッド
日本の大手企業でも今年中にICOする予定があるとの話がありました。さらに、Tポイントカードなどに代わる可能性もあるとのことです。さらに、実際に実現されているあるいは試験的に導入している事例の紹介がありました。自社(INDETAIL)では、「調剤薬局のデッドストック解消サービス」を2017年10月に試験(Phase 1)を完了しおり、今年中に実店舗での運用実験(Phase 2)に入るとのことです。
坪井さんはIT分野では第三世代に分類されるペンチャー企業の起業者(40才前後)であり、ビットコインの話題がマスコミで多く取り上げられる中、その基盤技術であるブロックチェーンの事業化(一部実用化)に取り組んでおり、今後が期待されます。参加された皆さんには、大変興味深く役に立つ内容であったと思われました。
出席者は8名でした。

(坪井氏と語る三橋教授)

(講義中の坪井氏:パノラマ写真)

(講義スライドの一例)

(講義風景:パノラマ写真)