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2018年04月21日

eSRU第13期第4講

 eシルクロード大学(eSRU)第13期第4講は
2018年4月19日(木) 18:00〜19:30、
講師にNPO法人北海道雪崩研究会理事松浦孝之氏をお迎えして
「雪崩のメカニズムを如何に登山者やスキーヤーに伝えるか〜那須雪崩事故から学ぶ〜」
の演題でお話を伺いました。
場所はいつものユビキタス協創広場 U-calaでした。

 最初に松浦氏の自己紹介がありました。元小学校の教諭で退職時は厚別東小学校長でありながら、登山歴は40年に及び、マッターホルンやモンブラン等の世界的に有名な山々の登頂経験があるそうです。また、雪崩講習会を1994年から開講し、講師も24年間行っており、日本雪氷学会の会員で北海道の雪崩学の第一人者であるとのことです。ニトヌプリ雪崩や尻別岳雪崩事故調査を行ったことがあるそうです。同氏が理事を務めるNPO法人北海道雪崩研究会では、雪崩の発生メカニズムから積雪の安定性を調べて雪崩リスクを判定、さらには雪崩トランシーバ(‘雪崩ビーコン)の実践的の講習会を行っているとのことです。

 先ず平成29年3月27日に発生した那須雪崩事故の事例に基づいた具体的な検証結果についての解説がありました。事故の概要は下記のとおりです。
・「春山の講習会」を7校合同の講習会として開催
・生徒51名、引率教員11名
・死亡8名(教員1名を含む)、重傷2名
・雪崩発生場所は斜面40度で下でも38度程度あり、雪崩が発生しやすいと考えられる場所
・樹林帯を登ったが事故現場の上方には木が生えていない
・雪崩が発生する可能性があるかを調べる弱層検査は生徒が行った
・下見は3/11、事故発生3/27の2週間前であった
・気象台が「雪崩注意報」を発令していた

 那須の雪崩事故の検証委員会の報告の概要は以下のようなものです。
「事故の課題 経験則から安全だと思った」
1 講習会は安全でなくてはならない
  登山のリスクや場所の担保
2 高校生の部活における強制性の課題
  生徒と親が「参加する」決定プロセス
3 指導する講師の課題
  学校の教師はプロガイドではない
4 山岳の雪崩管理と認識
  茶臼山・過去の雪崩の例
※自然発生雪崩か人為的雪崩かは判明しなかった

 問題点(事故原因)と考えられることとしては以下の点が挙げられます。
 ・講習会の場所は冬山状態なのに「春山の講習会」として開催された
 ・事故を想定していない(シャベル、プローブ、ビーコン等の装備なし)
 ・荒天の際の代替案等も、事前に検討されてなかった
 ・最終的には主催した県高校体育連盟が責任を持つが、現場の責任者が曖昧で安全管理について十分に配慮した責任ある行動をとり得なかった可能性がある
 ・一部の生徒が教員の従わず、先に登っていった
さらに、
 ・教員が引率=強制性があると認識する問題
 ・水泳の指導のような感覚で、教師が何でもできると思ってしまった?

 実際に発生した雪崩の2つの動画を見せていただきました。1つの動画は撮影者が雪崩に巻き込まれていくものでした。撮影者は見通しの良いところから雪崩を撮影するので、雪崩に巻き込まれるリスクが高いとのことです。
 
 ただし、栃木県教育委員会は「一律に禁止する措置は取らず、雪崩発生の危険性がないところに限って活動を認める」としたことは評価されるものであるとのことです。

 カナダの雪崩事故の例からの教訓の話がありました。
カナダで2003年7名の高校生が死亡した雪崩事故が発生したが、全員が雪崩トランシーバ、ビーコン、シャベル、ゾンデ棒(プローブ)を携行し、さらに事故発生直後に衛星電話で救助要請を行った。5分後に1名救出し、40分後に10名の救助隊員がヘリで到着して、40名全員を80分後に掘り出した。安全対策として、その後も登山講習中を中止するのではなく、より安全が確保されるところで訓練を行うものとした。(那須の雪崩事故では救助隊は2時間後に到着し、それまでの間は手で掘り出したが顔を掘り出すことがやっとだったとのことです。)

 事故後カナダでは学校における登山講習会の試みが続けられ
・親に「インフォームドコンセント」・「情報提供」を行う
・カナダのマウンテン・ガイド協会を通じて認定された指導者が学校グループを指導する
・安全性に焦点を当てたカナダ雪崩センターを作る

 日本の雪崩対策等の問題点としては
 ・気象台が雪崩注意報を出している程度であり、それも山岳ではなく平地に対するものである
 ・雪崩注意報は頻繁に発令されるため、注意意識が低下している
 ・雪崩事故の発生現場の状況が共有されていない
 ・雪崩のメカニズム等が山岳部等に所属していない登山者やスキーヤーに伝わっていない

 25年前の雪崩学の現状としては
 ・基本的に雪崩事故対策として役に立たない
 ・弱層の強度を測り、積雪の安定性を評価する傾向
 ・事故は主に登山者であり冬山のセオリーが強調され経験主義

 茶臼岳の雪崩事故のお話があり、平成22年3月27日に引率の教員が雪崩に巻き込まれ、50〜60m流された。この事故の時には弱層テストはしていなかったとのことです。現地では過去にも雪崩事故があったとのことです。

 情報共用の実践を行っている紹介がありました。北海道山岳雪崩事故WEBデーターベースの構築を行っており、国土地理院の地図を用いることで三次元的に雪崩事故発生現場を知ることができるとのことです。
http://kenkyu.h-nadare.com/?page_id=407 (北海道山岳雪崩事故WEBデーターベースのURL)

 海外では15分以内に救助することにより生存率が高くなることが知られているが、日本にはそのような情報はないとのことでした。日本海側の雪は湿っていて重いことが多いことから窒息死に至るまで短く、低温で軽い雪では18分程度大丈夫かもしれないとのことでした。このような検証も日本ではされてないとのことです。

 雪崩トランシーバ(雪崩ビーコン)の紹介がありました。雪崩トランシーバはアンテナが1本・2本・3本とそれぞれの世代に対応しており、最新の3本アンテナの製品ではDSPが搭載されているとのことでした。雪崩トランシーバの仕組みはメーカーが公開されておらず、使いこなすためには経験と訓練が重要であるとのことです。3本アンテナうち一番短いアンテナは近傍であることを知るためでもあるそうです。
雪崩トランシーバで探索したのちはプローブによって遭難者を捜索して、そこを掘ることになるが手では無理であり、必ず携行したシャベルを使用する必要があるとのことです。バーアンテナを使用していることから磁力線の特性の知識も重要であるとのことです。1本アンテナの世代には3m偽のマキシマムと3mスパイクが発生して、捜索を難しくしていたとの話がありました。3本アンテナのものは、初心者でも使いやすいとのことです。

 多数回積雪安定性テストというのがあり、雪崩リスクを判断するため、シャベルコンプレッションテスト(CT)というものがあり、破断するまでのシャベルでたたく回数が少ないほど危険であるとのことです。その結果は例えば下記のように表記し、
CTE2SC@34cm
テスト名 回数 破談の特徴 破断した箇所の順となっているそうです。
さらに、松浦氏が自身でデータ収集を続けていきたいと考えており、雪のたまり方で異なることや凸状斜面と緩斜面の違いに注意が必要であるそうです。

 日本の雪氷学自体は国際的な水準にあるそうですが、雪崩に関する研究の事例は多くはないそうです。雪崩リスク3要素は、「暴露」・「脆弱性」・「雪崩ハザード」であり、その意味することを理解することが必要であるそうです。

 聴講者のコメントで、「北海道山岳雪崩事故WEBデーターベース」を高く評価するものがありました。

 出席者は8名でした。

講義中の松浦氏A.jpg
(講義中の松浦氏)

講義のテーマA.jpg
(講義のテーマ)

4・19(その3)熱弁で 雪崩啓蒙 普及なりA.jpg
(講義風景:ここをクリックでパノラマ写真表示
posted by esre at 11:33| Comment(0) | TrackBack(0) | eシルクロード大学
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