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2018年08月24日

eSRU第13期第8講

eシルクロード大学(eSRU)第13期第8講は
2018年8月23日(木) 18:00〜19:50
講師に札幌新陽高校校長荒井優(ゆたか)氏をお迎えし、
「本気で挑戦する人の母校 札幌新陽高校の教育改革〜
出会いと原体験による教育リノベーション〜」
の演題でお話を伺いました。
場所はいつものユビキタス協創広場U-calaでした。

 荒井氏が校長を勤める札幌新陽高校は札幌慈恵学園が経営する高等学校です。同学園は荒井氏の祖父に当たる荒井龍雄氏が札幌慈恵女子高等学校を創立した事に始まり、同女子高が札幌新陽高校に学校組織を変えています。現在の同学園理事長は衆議院議員の荒井聰氏で優校長は聰氏の息子の関係にあります。理事長の要請で2016年に校長職に就いた時は全国最年少校長でした。

 荒井氏は大学卒業後企業に勤め、ソフトバンク(株)の孫正義社長の下で社長室勤務を経験しており、教育界と縁が無かった事もあり、校長就任後高校経営に徹して、演題にある教育リノベーションを推進できたのだと思われます。孫社長の薫陶を得て社会や組織のしっかりしていないところを企業人の目線で探り、目的の実行につなげている感じです。

 そもそも現在の高等学校は教育全体の中での位置付がはっきりしていないとの解説には驚きです。義務教育の小学校はprimary school、中学校は secondary schoolで義務教育が終わった後の高校はhigh schoolと英訳されて海外のこのカテゴリーの教育組織に対応するものかと思っていると、日本の高校の英訳はupper secondary schoolでかなりあいまいな存在であるそうです。

 旧制高校では、大学に進学した場合に、講義の理解や専門分野に進むための準備の教育を行うというはっきりしたものがあったのに対して、現在の高校は、何故多くの総合教科を学習しなければならないのかが、はっきりしていない。教育する方も大学受験に必要だからと惰性的に教えているが、教育の目的があいまいなので理解できず座っている生徒をそのままにしていて、生徒のマネジメントができていない。この点、部活動は目標があり、生徒のマネジメントが出来るので、部活動の先生の意見が高校の組織に反映され易くなる。しかし、部活動はあくまでも課外活動であって高校教育の根幹ではない。高校は全国に約5千校あり、3年生は約100万人、そのうち60%が大学進学、40%が就職等に振り分けられている現状で、高校のあいまいな立場は問題を孕んでいる。そこに高校リノベーションの鍵がある、というのが荒井校長の持論です。

 偏差値上位の高校を除けば、高校生の1/3は小学4年生の学力だそうです。これは社会の現状が学力に反映しています。札幌新陽高校の場合、1/3が母子家庭で、小学4年になって宿題を出されると、宿題をやらせて面倒を見る親が居ない。こうなると家庭での学習の放棄につながり、そのまま高校に進学する。このような高校生を抱えた場合、学力をつけるのは動機付けが大切で、何をどのように学ばせるかよりも、何のために勉強するかの指針を示す方が学力向上に効果がある。そのため札幌新陽高校では探求コースの授業の採用を始めたそうです。

 従来の一般的授業では受験科目毎に分かれた各教科を相互関連のないまま教えるのに対して、探求コースではあるテーマを決め、そのテーマに必要とされる科目を関連づけて学習していく。宇宙開発であればロケットの軌道計算に数学やコンピュータ解析、宇宙空間での物体の動きを理解する物理、宇宙開発の利用法を社会科の観点から考察する、海外の文献を読むための英語、レポートをまとめるための国語、等々と現在学んでいる教科が目的に沿った知識獲得であることを理解させて授業を進める、というものです。

 ビジネスの世界で仕事をしてきて荒井校長は、高校経営の観点から誰が顧客で顧客に対してどんなサービスを提供できるのかを常に考えているようです。高校の場合、顧客は第一義的には生徒です。しかし、前述のような母子家庭を考えると、母親が顧客とみなせるそうです。働きに出てあまり子どもと接することが無い状況で、高校生の我が子から高校生活での成果を聞くことになれば、親の方がその高校に我が子を通わせる事に積極的になり、子どもからの報告が高校からのサービスと思えてくる、という考え方です。

 新陽高校では卒業後に奨学金等が充実している大学を探し、生徒の受験の手助けを積極的に行っているとの事です。そのために全国の大学の情報を得るための専任の職員が全国を飛び回ります。経費は年間300万円で、なるべく多くの大学を訪問するためアポイント無しの飛び込みで大学から話を聞き出すそうです。アポイントを取っていては回れるところが少なくなるので、それを回避するためと聞くとなるほどと思いました。新陽高校の卒業生が、進学した大学で選ばれてスピーチをした例などが紹介されました。北海道の高校生は本州やさらに海外の大学に行きたがらないというのは本当ではなく、大学の情報がきちんと生徒に伝わるとどんどん北海道から出て行くとのお話でした。

 大学の話も出て来て、これからは学歴社会から最新学習社会への流れになるだろうとの解説です。大学の授業料は多くは企業が支払うようになるのではないか、と予想も語られました。少子化では大学生の求人にコストがかかり、短期間の就職活動では良い人材が得られる保証もない。それなら、大学の授業料は企業が持ち、そのような学生から採用者を選ぶ方がコストは抑えられる。現在でもこのような奨学金制度はあるでしょうが、それがもっと一般的なものになっていくだろうとの見通しです。

 大学の問題点についての話もありました。「古習の惑溺」の言葉も紹介され、従来のやり方を繰り返しているだけでは人材は育たない。この言葉を打ち破らねば大学で人材を育てる事に行き詰まる。企業も「古習の惑溺」の大学生を採用していては将来の発展が望めない。荒井校長は高校教育を突破口にして日本の教育制度の変革を目論んでいるように見えました。

 出席者は6名でした。

講義中の荒井氏A.jpg
(講義中の荒井氏)

探求コースの解説A.jpg
(探求コースの解説)

教育における価値の転換A.jpg
(教育における価値の転換)

8・23(その2)高校を 経営で変え 新校長A.jpg
(講義風景、ここをクリックするとパノラマ写真
posted by esre at 18:46| Comment(0) | TrackBack(0) | eシルクロード大学
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